最初に言っておくと、「映画の感想」では、まったく、ない。
昨日劇場を後にしてから寝るまでの間に、アタマやココロに浮かんだり、よぎったものの一部は、既に、熱を帯びているうちに極力 SNS に放り投げてある。
そういう作業自体を、すかさずしておきたい感じの作品だった。
その程度には、なんというか、個人的に思い入れの強い映画であったのかも。
でも、SNS に放り投げて満足しただけでは、今現在どれだけ熱を帯びてても、時と共に冷めてっちゃって、タイムラインだけでなく記憶からも、これだけの熱量があったという事実すら流れ去ってしまいそうで、それすら悔しく思えるのでここに纏めておく。
熱を帯びてたものを後から冷めた目で眺めたら、往々にして、その空回りっぷりがみっともなかったりするんだろうけどね。SNS に放り投げたものに、いくらか関連情報を付け足して再構成しておく。
アサッテの方角に向かって個人的思い入れが強すぎるので、考えてみると、今に至っても、映画そのものの物語とかメッセージとか、そういうものの反芻に至れてはいない気もする。
時系列ツイートとその補足など
写真撮る余裕も元気もなかったけど、「パキスタンマンゴージュース」は期間限定でローソンで売られてたアレ。
“Allah Hu” by Ali Zafar & Saaein Tufail
“Sawani Saloni” by Vital Signs
これは帰路にツイートしながらも、ちょっと確信持てずにいたけど、ようつべで該当シーンを探したらやっぱりメロディは同一だった。歌詞のゴロはやっぱり違う気がする。
大昔から、歌詞の文言を厳密に把握しないままに散々聴いて、オトを広い、耳コピで歌ってたので、多分この歌詞の「ゴロが違う」という感覚は正解なんじゃないかなぁ。
きちんと歌詞の突き合わせしてみたい。
…と、上記の反応に至ったケミカルみたいな何かこそが、個人的には今回の全てなのかもしれない。
ディルディル
で、今日会場にいらしてた皆さんの Tweet をチラ見してたら、
he founded his first success for introducing Vital Signs in the mainstream television after composing and writing the song, Dil Dil Pakistan
Shoaib Mansoor – Wikipedia, the free encyclopedia
この「ディルディル」ってのはパキスタン界隈を知ると「犬も歩けば棒に当たる」的な、誰もが知ってる国民的パキスタン応援歌 Dil Dil Pakistan のこと。
“Dil Dil Pakistan” by Vital Signs
まさにこの歌を歌ってたのが、上で触れてた「歌を捨てたポップシンガー」 Junaid Jamshed 率いる Vital Signs なのでした。
つまりはショエーブ・マンスール監督自身が Vital Signs と近しい人物だったワケで、そりゃあちこちに Vital Signs や Junaid Jamshed がチラ付くワケだわよね。
Wikipedia 読んで予習してたら、映画観る前から知り得たコトだったんじゃないの、という気持ちと、事前情報として全く知らなかったのに、色々繋げて反応してしまったおいら、すごくない???っていう、ああ、そう、そこでものすごく私的に色々感じ入ってしまってるんだな、今回は。
Junaid Jamshed
帰宅してからも Junaid 周りが非常に気になってたので色々ググってたら、こんな記述を見かけたのでした。
Mansoor directed and also wrote the script of the successful film Khuda Kay Liye. Mansoor said that the film was inspired by Jamshed’s life, and offered him a lead role in place of Shaan Shahid. When offered the role, Jamshed maintained that he will “shave his beard” for the film and the role for Jamshed was written by Mansoor. Jamshed later refused to be a part of the film and Mansoor maintained that: “Responses like this one convinced people that Jamshed was not certain about his future, and that the Islamist experience was just a phase.”
Junaid Jamshed – Wikipedia, the free encyclopedia
改めて色々繋がった感すごい。繋がりすぎて気持ち悪いくらい。
ちなみに最近の Junaid Jamshed の風貌はこちら。ちょっと上に戻って見比べてみてくださいよ。いや、パキスタン行ったらこんな風貌の人ばっかですよ。だけど、有名ロックバンドの人気シンガーがある日突然この風貌に変わって歌を捨てちゃったわけですよ。
この動画では風貌とはうらはらに、 Dil Dil を歌ってますが、ストリクトながっつりイスラーム回帰以降、ずっとポップスとは距離を置いてたはずなので、この風貌で Dil Dil を歌ってる姿はかなりレア動画ですけどね。
「歌を捨てた」とはいっても、その美声を─まさに映画の中で言ってた「ダビデの楽器」の入った喉を─イスラームでは禁じられているとされる「音楽」のために使うのは辞め、かわりに naat を始めとする、預言者や神を讃える詩を節つきで詠むことに活かしてたのは知ってたのです。
とはいえ、パキスタン文化との第一次接近遭遇から、しばらくのブランクを経て、ネットでその後の Junaid の風貌の大変化と活動停止を知った時のショックといったら……。
これこそ、劇中のマンスールとその家族が弟の変貌を知って受けたショックと類似の感覚かもしれませんね。おいらは家族じゃないしパキスタン人でもないので、受け止め方にはかなりの違いはあるにせよ。
話は若干逸れますが、実は Nusrat の死も、パキスタン文化との第一次接近遭遇後、関心をすっぽり失ってた空白期間を経て、ほぼ同じタイミングでネット経由で知って、めっちゃショック受けたんですよね。
思えば、おいらにとっての「南亜細亜熱再燃(21世紀バージョン)」はそんな浦島ショックから始まった感じだったんだな、しみじみ。
さて、話を戻して。
上の動画のとおりで、ここ最近になって再び、いわゆる「歌謡曲」っぽいモノをたまーに公の場で歌うようになってきてて、あれっ?てコトがちょいちょいあるんですよね。
彼のものに限らず naat 界(なにそれ)自体も、最近はどんどんミュージックビデオ仕立てなのが増えてきてるので、ガチにストリクトな雰囲気からは、多少和らいでるのかなぁ。いや、彼らは彼らで、ネットや動画を利用してもっとその考え方を広げていきたいと思ってるんでしょうけど。
最近起きた、学校に通う子供達が多数犠牲になったテロ事件、いわゆる「ペシャワールアタック」でも、在りし日に全盛期だったポップス系ミュージシャンたちによって行われた、犠牲者支援のための大きな再結成イベントにも参加しててびっくりしたんだ。
そう、びっくりしたんだよねー、って動画を探したら…。
なんだよ!もう!
ショエーブ・マンスール監督もしっかり再結成メンバーとして混じってたんじゃないかあああ!
ホントにぜんぶ繋がってたんじゃないかーっ!(悶絶)
いやホント、昨日はコレに尽きてしまった。
もしかしたら、おいらにとっての「南亜細亜熱 第二幕」が終わったのかもしれない。
いや、興味を失ったワケじゃないし、熱が冷めたワケでもない。ないんだけど、おいらの中では実質、すごくすごく大きな一区切りの日だったように感じてしまって、ちょっと昨日から若干虚脱状態気味。大袈裟だけど。
第三幕はなー。ああいう方向かなー、そうしてきたいなー、ってのは多少あるんだけど、有言不実行になると己が情けなくなるばかりなので、不言実行を目指していきたい。
その他もろもろ
ここから下はまぁ、蛇足っぽいつぶやきだけど、一緒にまとめとこう。
ひょんなことでFBで繋がった、おいらにとってのリアルタイムなマンスールくん(だけどどっちかってと弟キャラ)。
“Awara” by RaaH
ヒゲの薄い方です。なかなか優男でイケメンでしょ。
ヒゲ濃い方のコが個人的には好みだけど。
幼少期にお父さんの仕事の都合で日本にいたコトもあって、すごい親日家。311直後には、別バンドから日本応援歌もリリースしてた。
「また日本行きたいなー、音楽で行けたら最高だなー」って言ってたけど、いつか来れたらいいねぇ。
何か実際の意図があったのかなかったのか、たまたまなのかもわからないけど、他は全編通してパキスタンとムスリムとしてのアイデンティティ一辺倒だったのに、ここでは明らかにヒンドゥ由来な曲を演奏していて興味深かった。
なんでこの曲だったんだろう。ヒンドゥっぽさの明示というよりは、タージマハルの話題も出て来てたし、印パの境も歴史もよく解らない一般アメリカ人に対しての、ヒンドゥスターニー音楽の香り…ってニュアンスなのかな。
【2023/12/03 追記】これ、当時なんでクリシュナの歌っぽいって勘違いしたのかよくわからないな。まぁ、ヒンドゥスターニー音楽系ではある!【/追記おわり】
ちなみに、動画半分くらいダダ被りだけど、過去に Junaid についてアツく語ってた記事はこちら
2023/12/03 追記
今月、来週?東京外大で、N回目の上映をされるという。
おいらも勿論また見に行く。
それを機に、この古い古い、だけど今読み返しても個人的には意外と重要ポイントの詰まったこの記事も加筆・修正した。
ここで自分独りで繋がってって興奮してた話含め、今見たら IMDB のトリビアページにも色々制作背景として載ってるね。
この映画に限って、個人的には「知った」ことよりも自分の中で、過去の自分が身近に感じたもろもろだけで、あれよあれよとパズルのピースがハマってったことが多分大事なのでよいのだけど。
以前書いた内容部分はほとんど変えていないが、リンク切れを起こしていた YouTube や、仕様の変わった Twitter の embed コードなどを直し、あからさまにおかしな文章表現を直しながら、「ああ、この記事を公開した2015年3月はまだ Junaid Jamshed はこの世にいたんだ…」ってなった。彼は翌年の暮れに不慮の飛行機事故で亡くなった。
記事の中で「ついで」で言及した、おいらにとっての当時のリアルタイムなマンスールくんも、まさに当時、リアルタイムで音楽活動のためにアメリカに渡ったのだが、その後アメリカを拠点に、何故か宗教寄りの活動に力を入れるようになっている。
勿論過激な何かではないと思うが、首都出身で幼少期から海外滞在経験も豊富、かなり世俗的な富裕層家庭で育った彼がそのような転向をしたのはちょっと驚きだった。やり取りも途絶えているので、何があったのか、どういう心境の変化があったのかは解らない。
折に触れ、この映画 Khuda Ke Liye について色々話をした、この記事をどこかで何度か紹介してくださった恩師も亡くなった。
この10年未満のうちに、この思い入れ深い映画にまつわる色々なことも変化してる。
ショエーブ・マンスール監督は2023年現在、4作目を制作中とのこと。