Coke Studio 2020 (Season 13) の出演者ラインナップ纏めと、纏めながら考えた古典音楽と現代音楽の相関関係

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先週、国外リスナーは参加が叶わぬ状態で、コカ・コーラPK社とパキスタンのローカル音楽ストリーミングサービスPatariのジョイントによる、Coke Fest 2020が開かれ、「今年のCoke Studioの詳細もそのイベント内で発表する」と予告されていた。

Coke Festで発表されたらしき出演者の速報記事が以下あたり。

出演者の発表はしておきながら、Coke Studioお得意の、完全な詳細を明らかにしないスタイルなので、肝心の開始日は未だ不明。
パキスタン人リスナーが公式にコメントで尋ねても、「Stay Tuned!(ウインク」の一点張り。

一説には、「今月末ではあるらしい」との話もあるが、そうなると、公開は例年、週末と相場が決まってることと総合すると、どう考えても今週末になるのだが、果たしてどうなることやら。

タイトルも、上記の両記事ではCoke Studio (Season) 13となってるものの、公式からは今のところCoke Studio 2020の表記しか見当たらない気がする。正式名称がどちらなのかすらよくわからない。

今まで事前にきちっと出演者の情報を調べたことはないのだが、今年は引きこもりにも拍車がかかっていることもあり、ちょっとしたエンタメ感覚で纏めてみた。

一部例外もあるが、纏めの原則は、Coke Studio出演歴のある人は(極力)直近のCoke Studioでのパフォーマンスと、歌番組ものではないパフォーマンスを載せ、初出演の人は解った範囲で目に止まったもの、気になる情報を載せてみている。

上述の記事に出てた順番に倣って纏めてみたが、日本(の一部マニアに)でも名の知れた有名どころから徐々にマイナーどころに至るのだが、マイナーどころや初出演のアーティストにも非常に興味深い人が多くて、なんならスクロールして、一番下から見てってほしいくらい。

Rahat Fateh Ali Khan

もはやQawwali界のレジェンドであるNusratの甥っ子というだけでなく、すっかり本人も大御所の地位にあるが、実際Nusratの楽団で歳若い頃から、歌唱の才能は目をみはるものがあったので、ただの七光としてではなく、自身が大御所として君臨するのも全く異論はないし、世間もそうじゃないかと思う。

ただ、個人的な好みとしては、Qawwalに対しては本来的な場で歌う姿を珍重してしまうため、もはやそういう場で歌う姿はとんと見ず、国内外の大舞台でキラキラしたパフォーマンスばかりの彼は積極的には追いかけてない。

Coke Studioはもう何度も出演しているので、直近の出演からひとつ。
もうひとつがパンジャーブの悲恋民話Heer Ranjhaものだったので、そっちを貼ろうかと思ったけど、一緒に歌ってた若い歌い手さんを喰っちゃう気満々で歌ってて、その大人気なさがやや残念だったので、ピンで歌うスタンダードなQawwaliもの。

Coke Studio Season 12 | Dam Mastam | Rahat Fateh Ali Khan – YouTube

そうなんだよな、余談なんだけど、昨年のCoke Studio 12は、アーティストが誰であろうが、シンギングボウルだっけ?あれが妙に多用されてたのがちょっと鼻についたんだよな~。

さておき、次は本人が直近にリリースしたMV。

Nasha | Ustad Rahat Fateh Ali Khan | Salman Ahmed | Josan Bros – YouTube

もう、めっちゃラテン。映像もパではなくラテン。
しかし以前からわりと力説してるのだが、南亜細亜とラテンの音楽の親和性の高さがまた立証されたような気はします。

しかも表層的にはめっちゃラテンだけど、どうやら歌詞は完全なるスーフィー文脈踏襲っぽいのには舌を巻きました。なんだ、スーフィーがラテンに侵食してる!上手いなぁ。(そして、この記事全体を通してもここ、実は重要ポイント。)

楽曲制作に関わってるSalman AhmadさんはVital Signs~Junoonにも関わってたパキスタンの現代・西洋音楽・ロックシーンに20世紀から大貢献してる方ですね。
(※現代音楽≒西洋音楽だけど、古典との対比文脈なので以下、現代音楽と書いたらここでは「現代の(主に)西洋音楽」を指してると思ってください)

Salmanさん世代をパでの現代音楽シーンの草分け第一世代と言っていいのか、それより前ジェネレーションがあるのかわかりませんが、もはやおじさん世代な彼ら世代が今でも新しい事をやって攻め続けてるのも今の若い世代には非常によく働いてる気がします。

かと言って、Rahatはもう純粋なQawwali、スーフィー歌謡や宗教歌みたいなものはうっちゃってこういうのばかりやってるのかと言うと、勿論そうではなく、これより少し前にはHamd(神への讃歌)などもリリースしてます。

Sanam Marvi

2012年(もうそんな前か!)に、東京無形文化祭で日本にも来日した、おいらの大好きなSanamたん。彼女も前回12にも出演。

Coke Studio Season 12 | Hairaan Hua | Sanam Marvi – YouTube

ほんとにシンギングボウルがうざい。
さておき、彼女もすっかり実力派の有名どころですね。年季入ってきてもどことなく無防備な少女っぽさを感じさせる声質が大好きです。

Sanam Marviの「その他」動画はどちらを貼ろうか悩んだけど、どちらも捨てがたかったので両方貼ってしまいます。

1つ目は一応MV的なものですが、これもHeer RanjhaだしBulleh Shahだし出てくる映像も現地の実際のスーフィー行事に即したシーンが(若干綺麗めに)盛り込まれててたまらんです。

Yaar Mana Laiye | Official Video | Ahmed Hassan | Sanam Marvi | Suristaan Music – YouTube

彼女はハイデラバード出身のようですが、このメインのロケ地はどこなんだろう。広く整地はされてそうなのに建物は相当古いままあまり手入れがされてなさそうな。

やだ、書きながらまた1曲ずつ全部見入っちゃってたら書き終わらない。

2つ目は現地でのステージ動画。
やー、会場のハコのデカさも観客の数も、ステージ上で従えてる楽団野郎の数も、楽団は彼女自身の、というわけではないかもしれないけど、それでもそれをしっかり操ってるSanamたんもすごい。

Naara_e_Mastana by Sanam Marvi – YouTube

Nara e Mastana、Wasif Ali Wasifによる愛に酔いしれるまさしくスーフィー詩のようで、Abida Parveenも歌うようですね。会場でも踊りだすおっさんが湧いてたり。女性スーフィーシンガーによく歌われる詩というのもちょっと気になるところ。

Meesha Shafi

こちらはCoke Studio前期~中期にわりとよく出演してたMeesha姐さん。
Season 9以来だったとは、今回、ちょっとお久しぶりな感じですかね。

ちなみに、このMV冒頭から出てくるコーラス三羽烏に関してはちょっと心に止めておいて戴けると後半読むのがちょっと楽しくなるかも。

Coke Studio Season 9| Aaya Laariye| Meesha Shafi & Naeem Abbas Rufi – YouTube

Meesha姐さん、本業は女優なんでしょうかね。相当昔にロックバンドに混ざり込んでたMVはあったんですが、個人的には別記事でも既に紹介済みの、Abdullahくんとのコラボが今はやはりイチ推しなので、ここでもしつこくそちらを貼ってく事にします。

Abdullah Siddiqui, Meesha Shafi – Magenta Cyan (Official Music Video) – YouTube

いや~、いくら見ても良い。

ちなみにMeesha姐さんの近況を調べると最近は、どうやら大御所ロックスターのAli Zafarをセクハラで訴えたとかなんとか、そんなゴシップばかりが出てきます。

真相はようわからんし、そんなに興味もないんですが、パの芸能界もそんな乱れがあるものなんですかね。

Ali Noor

何故か今回Ali Noor個人名義で名前が挙がってるんですが、過去には自バンドのNooriで何度も出演してるので、そちらを貼っておきます。
9の時はCoke Studioの音楽ディレクターとしてもNooriのバンド名義で起用されてたんですね。

Coke Studio Season 9| Paar Chanaa De| Shilpa Rao & Noori – YouTube

なぜ今回はAli Noor個人なんだろう。個人名義の直近のMVもあったのですが、どうしても以下のNooriのMVが貼りたかったのでそちらにします。

Nooriもパの音楽をいくらか追ってる人なら行き当たりがちな長寿バンドで、1990年代から活動してますが、そんな初期の頃のラホールのMinar-e-Pakistan(パキスタンの塔)の公園で撮られたMVの映像がめちゃめちゃよいのです。

Jana Tha Hum Ne | Noori World – YouTube

この公園、つい先日、ラホールの極右の親玉の葬儀でもものすごい数の民衆が集まって、すごい絵面になってた報道のあった場所です。

この撮影も、公園側には許可取ってセキュリティガードも付けてる様子だけど、有象無象集まってる聴衆は、エキストラでも何でもなく、その時たまたまそこにいた一般のパ人ではないかと。

映像を見ても、今より洋装している人は格段に少なそうで、つまりは今よりも保守的な雰囲気もいくらか窺える。

当時からパキスタンでは現代音楽を受け入れる素地は印度に比べると格段にあった………とは言え、こんなロックのような現代音楽に、ごく普通の人が直に触れる機会は今より少なかったろう。

そんな推測をしながら見ていても、老いも若きも子供も、パ人らしい素直な好奇心で突然のロックとの接近遭遇を、先入観ゼロで、それぞれがその場で受け取ったまま楽しんでる雰囲気がめっちゃいいですね。

Bohemia

こちらもめちゃめちゃ久しぶりの出演になるBohemia。
これは2012年当時、おいらも「あのBohemiaが!Cokeに!!!」と、めっちゃ驚き、楽しみにしてた記憶が今でもはっきりあります。

School Di Kitaab | Bohemia | Season 5 | Coke Studio Pakistan – YouTube

普段のラップのステージよりちょっと固くなってな~い?とか思った記憶もあるw
でも、今改めて観たら、若干の固さは否めないものの、それでもかっこよかったわ。

米国発で初のPunjabi Rapperとして成功して数年、このCoke Studio出演と前後して、主に印度でのライブ出演は徐々に増えていたけれど、知ってる限りではこれが実質、パ側での初の凱旋逆輸入ステージみたいな位置づけだったんじゃなかったかな。それ以前にもパ入りしてたかなぁ。その辺りは若干不確かだけど。

加えて、ラップなる非メロディアス系なジャンルのアーティストというのもCoke Studio初登場だったし。
それが故か、完全にソロステージだもんねぇ。

というか、Bohemiaも、その後の2018年も、ラッパー起用しているシーズン、別途フォークシンガーとのジョイント曲もあることにはある。
が、さすがのCoke Studioもラップの扱いは不得手なようで、曲の途中にただラップを添えるのが精一杯な様子で、フュージョン感や融合感は持たせられていない。

そんな中、今回のBohemiaはどんな風に料理されるのかは楽しみなところでもある。

で、最近のBohemia。
これも直近でいくつかはリリースされてたけど、敢えて2~3年前のMTV Indiaのドキュメンタリーの一部的なかっこいいヤツ。

Purana Wala – BOHEMIA & J.HIND – Panasonic Mobiles MTV Spoken Word 2 – YouTube

US現地で印度側パンジャーブ出身のラッパーとコラボしてるという構図が、先日のイベントのYoung Desiの所で話題にした印パ双方のリスナーから出てきた “Punjab Unite” という言葉にも通じるものがあるように感じる。

その上、J. Hind(=Jai Hind=印度万歳)なる名前のラッパーとパキスタン人ラッパーBohemiaが共に、という部分もまた、イベントで取り上げた、ヒンドゥー教徒全開な名前を持つKR$NAとパキスタンのYoung Stunnersがコラボした、というのに重なって、今このタイミングで改めて見ると面白みも多重に深まる。

Aizaz

この方はCoke Studio初出演。
そしておいらが今回、大着目してる方。

コロナによるロックダウンで、生演奏が活動の場の中心だった南亜細亜の古典やフォーク、宗教音楽家たちの多くは、活動の場も収入源も断たれることになった。

そこで、ミュージシャン個人や音楽関連団体の間で、facebook を始めとするSNSプラットフォーム上でのライブ配信が勃興しはじめる。日替わりで、日に複数のライブ配信告知が増え始める。

カメラやマイク、通信環境など、配信のクオリティは個々の能力に相当左右されていたが、団体によってはものすごい良質な映像と音質でライブ配信を提供しはじめており、そんな団体のライブで目に止まった演奏家の1人がまさにこの人だったんだよね。

ガザルや古典を歌いつつ大学でも教えてる方らしく、以降マークしていたところ、「このMVで歌わせてもらいましたー」って報告&紹介してたのを観に行って、むちゃくちゃカッコよくてぶっ飛んだのが以下のMV。

Lalit – Amezish – YouTube

その後色々探してみるに、2つ目のこんなのも、おいらが追いかけ始めるより少し前にリリースしてたみたい。

Mohammad Aizaz | Todi | Bigfoot Music – YouTube

この2つより以前にはこういったタイプのものは見当たらないので、ここのところ立て続けに、古典と現代音楽を融合させたコンセプトのものに参加し始めているのかな。

このBig Footさんのプラットフォームは、どちらかというとアーティスト本人の能動に拠る活動を支援するコンセプトのようなので、Aizazさん自身がやりたくてやったのがこれ、という事なんだろうか。

[2020/11/29 追記]

Aizazさん2年前には既に、Mughal-e-Funkともコラボしてましたね。

Mughal-e-Funkも別途、Season 11に出演実績のある古典器楽で現代音楽やってるグループなので、ガチ古典陣によるコラボ、もはや一周回ってネオ古典、みたいな気もしますが、それぞれ古典と現代音楽双方ともにしっかり肌が触れてる人たちが故に出来るところを存分に攻めていってほしいです。

Mughal E Funk Ft Mohammad Aizaz | Aiman Tarana | Live At True Brew – YouTube

[/追記おしまい]

パキスタンは元々古典と現代音楽の垣根が低くて、スーフィーロックみたいなジャンルも20世紀のうちから定着してる。
(※以下、都度長くなるので、「古典」に宗教歌やスーフィー、フォークも含みます)

古典が、従来の現代音楽に一方的に添え物的な、スパイス的な使われ方をするケースは国を問わず多い気がするけれど、パキスタンはどういうわけか、「現代音楽が古典を取り入れる」だけではなく、「古典が現代音楽を養分として吸い取りに行く」側の文化も成熟しつつあるように思う。

スーフィーロックが定着したころはまだ、現代音楽をベースにしているパキスタンの若者たちが、そこに自分たちの文化の一部であるスーフィーを上手に融合してるだけなので、「現代音楽が古典を」のベクトル範疇だったと思う。

それが最近は、このAizazさんの活動を見ても、イベントで紹介したSherry Kingによる、古典とラップの見事な融合のさせかたにしても(あぁ、Sherry Kingについてはやはり、別途記事にしないと納まらない)、先に挙げたRahatのめっちゃラテンなスーフィーにしても、後述の別アーティストにしても、「古典畑が現代音楽を喰いに行く」ベクトルが主軸に見える。

とはいえ、最近はじめて起きた逆転というわけではなく、常に双方向のベクトルがあって、でも片側ばかりが目立っていたのかな、と思う。
ただ、最近になって、目立つことのなかったもう一方のベクトルが成熟して視覚化され、多様化して、洗練されてきてる。そんな時期なのかもしれないな、と。

これはパキスタンの音楽、まだまだ面白い化学反応が起きてくのかも。

…と、話が完全にズレましたが、そんなAziazさんの動向を追っていたら、今度はCoke印の画像を上げて「出ま~す!」って、まさかそんな大きな話まで出るとは期待していなかっただけに三度見くらいしました。着目してた人が「あの」Cokeに出るなんて、すごい嬉しい!

そんな個人的な感情も大きく手伝って、全力で応援します!

(ご本人も相当嬉しいようで、この記事上げてた後にも、SNS上で、Rohail Hyatt氏とCokeのスタジオで撮ったと思われる写真上げて長々とこれまでの苦労譚からこれからの新たな決意などを綴ってました。撮影終了したのかな?がんばれ~w)

Mehdi Maloof

この方も初登場。
そして全く知らない方。

1つ目の最近の動画はこちら。

Mehdi Maloof – Kaheen Main Khirki | The Smog City Sessions – YouTube

とても澄んだ綺麗な声と、最低限のアコースティックギター、そして単語を知ってる範疇に限り、おいらでも充分に解るレベルでシンプルで素朴な歌詞で、でもそのシンプルさがゆえの深さもありそうな。
…と、期待以上に好感を持って掘り始める。

もうひとつ挙げるMV。
まるでCoke Studioに合わせて、昨日か一昨日慌てて上げたらしきMVもあって、それも悪くなかったんだけど、どうしてもこちらに軍配が上がってしまった。

パキスタンについてそこそこ知識があると「あぁ」ってなる数字がタイトルのこの曲。ご多分に漏れずパのレペゼンかなーと思って聴き始めたんだけどね。

1947 Mehdi Maloof – YouTube

なんか切なすぎて、ホロリと来てしまったよ。
でも理解しきれなくてもどかしくて、耳で全部言葉拾える気がしないので歌詞探したんだけどないんだなぁ。全部知りたいなぁ。

Umair Jaswal

この人も前回に引き続きらしく、そこそこ脂の乗った俳優兼ミュージシャン的な人らしい(けど、個人的に一番興味の対象から遠いのでよく知らないw)。

Coke Studio Season 12 | Chal Raha Hoon | Umair Jaswal – YouTube

笑えるのが、検索したら、一文字違いのそっくりな有名人が表れて、えっ、誰?何?同一人物?別人?リストの名前がタイポだったの??
と混乱したんですが、このUmairさんの兄弟がUzairさんで、顔もすごくよく似てて、しかも一緒にバンドもやってるっていう紛らわしさw

Umairさん個人名義のMVもあることにはあったんだけど、似たもの兄弟(+もう1人、名前は似てない兄弟も込み)でやってるQayaasというバンドの方のMVを貼っておきます。

Umeed – Story Version – YouTube

UmairさんもUzairさんもQayyasもよく知らない筈なのに、この曲のサビ部分、どこかでよく聴いた記憶があって、我ながら解せない。
そのうち思い出すだろうか。

Wajeeha Naqvi

この方、探すの苦労しました。
名前で探してもほとんど何も出てこないのに、今季Coke Studioでは出演者だし、本人もそう言ってる。

しかも名前で検索すると、今季が初出演の筈なのに過去のCoke Studioの動画は出てくるんですよ。でもどれを見ても本人のパフォーマンスではない。

で、ようやく行き当たった数年前のお姉さんへのインタビュー記事を読み解くに、なんと!Coke Studio House Bandのコーラスやってたお姉さん!!

なるほど。そりゃ、検索で出てきた謎の動画群には名前なんか出て来るはずはない。同然。
だけど、概要欄をよくよく見ると、コーラスとして名前があった。だから検索には引っかかってたんだ!

そんなお姉さんが、今回は出演者。何その、将棋の歩成りみたいなの!
知らん間にCoke Studio、House Bandがそんな登竜門の役割まで担ってたとは。

というわけでコーラスとしてのWajeehaさんが冒頭に解りやすく出てきてたヤツ貼っときます。三羽烏の向かって右側かな。

Coke Studio Season 11| Ghoom Charakhra| Abida Parveen and Ali Azmat – YouTube

これ貼ってみたものの、実はMeesha姐さんのところで紹介したMVの方が確認しやすいと思います。

Zara Madni

Zaraさんもお久しぶりなんですね。
この頃、他にもすごく個性的な女性シンガーが多くて、ちょっと埋もれちゃってたのかな。おいらもあまり印象に残ってなかったです。
でもめちゃめちゃ妖艶でいい声ですねぇ、この方。魂抜かれそう。

これ、久しぶりに聴いてみて思い出したわ。Season 6って、Coke Studioが変な趣向に走って、House Bandとして(?)色んな国のアーティストを起用して、リモートセッション的な試みもしてたんでしたね。あんまり評判はよくなかったようで、今季限りで終わったけど。

おいら自身も当時、その趣向は要らんなぁ、って思って視聴自体いい加減になってたけど、ある意味、コロナより遥か以前にこんな、場所に囚われないリモートセッションを取り入れてた、というのは今になって観たら面白いかも。早すぎましたね、パキスタンw

Moray Naina | Zara Madani | Season 6 | Coke Studio Pakistan – YouTube

これだけ素敵な声の持ち主なのに、ご本人のMVも、ほぼほぼ唯一これだけでした。暫く育休でもしてたのかな。パならそういうのも大いにありそう。

Shallum Xavier Feat. Zara Madani – Payam – YouTube

Coke Studioではどんな感じで返り咲くのか、ちょっと楽しみです。

Sehar Gul Khan

この方も初登場、且つ、あまり自身のMVは揃ってない感じでしたね。

Dard K Mousam – Sehar Gul Khan – YouTube

ただ、芸歴の浅い新人さんという訳ではなさそうで、現地の映画やドラマのプレイバックシンガーとしては結構歌ってるようでした。そういう系はオリジナリティがどの程度出てるのかがわからないので、今回は貼ってません。

Nawazish

この方だけは残念ながら、どうがんばっても詳細不明でした。
この名前だけじゃあねぇ…。
ナニモノ。

Ali Pervaiz Mehdi

こちらも初登場。
お父さんがガザルの歌い手のUstad Pervez Mehdiさんだそうで、幼少期からハルモニウムの手ほどきなどは受けてたようですが、ご本人は20歳の時にアメリカに渡り、主にジャズの世界で活躍している様子。

母国を離れて長い人にあるあるな気もしますが、年齢を重ねると共に、自身の現在の主軸であるジャズに故郷の伝統を織り交ぜた楽曲を発表する事が、今まさに増えてきている所、という感じですね。

Mitti – Ali Pervez Mehdi ( Official Music Video ) – YouTube

こういう風に境界の溶け込んだようなジャズ混じりな南亜細亜古典は今までありそうでなかった感覚で、このブレンド具合、非常に好きです。

※サッチャルジャズオーケストラのように、古典器楽を用いてビッグバンド的なジャズを演奏する楽団はあるけど、ああいうスタイルのものは、個人的には融合やフュージョンとは切り離して考えてます。

Daag E Dil | Ali Pervez Mehdi | A Tribute to Iqbal Bano – YouTube

2つ目はオリジナルのIqbal BanoさんのDaag-e-Dilと聴き比べるのもなかなか興味深いです。主旋律はほぼほぼオリジナルなのに編曲は見事にジャズ。
ガザルだけどジャズ、ジャズだけどガザル。
これもやっぱり古典が現代音楽を喰いに行ってるケースかなーと。

ところで全然関係ないんですが、この人のMVをいくつか観て、米国で米国人と共に音楽キャリアを積んできた様子を観てると、どうしてもKhuda Ke LiyeのMansoor兄さんとの運命の分かれ道みたいな事を考えてしまう。

Mansoor兄さんそのものは非実在…だけど、大なり小なり色んな思いをした、当時の在米パ人の集合体みたいなものだろうから。

Fariha Pervez

実は12公開の時期は毎週気持ちに余裕のないまま、消化するような感じでながら観をしてることが多かったんですが、そんな中でもこれは「おっ?」て聴く耳が完全にこちらにフォーカスした記憶があります。
何にそんなに反応したのかわかりませんが。

Coke Studio Season 12 | Balma | Fariha Pervez – YouTube

しかし冒頭のシンギングボウルまじ要らない。
えっ、しつこい?いやいや、先にしつこいことしてるのはCoke Studioですから!
今年はナシでいいからね!

この方のチャンネル行って驚いたのは、曲タイプの守備範囲の広さ。
洋装で若い子みたいな(でもちょい古っぽい)ポップスからアコースティックなものからフォークからきっちりヒジャブで宗教歌まで、なんでもござれ。

そんな中で、意外とありそうでなさそうなパンジャーブ臭に溢れるMVを貼っときます。

Naariyan by Fariha Pervez (Official Music Video) – YouTube

生涯深く鍛錬しながらの古典や宗教歌での専業はそれはそれでものすごい事だけど、この方みたいななんでもそれらしくこなしてしまう器用さも、別途すごいプロの才能だよなぁ。

派手さは決してない方なんだけど、歌の巧さもそういう器用さも込みで、おいら的には高感度の高いFarihaさんでした。

Shehroze Hussain

さーて、最後にまた巨大な隠し玉が。

彼も、当初ググって表面的に出てきた情報だけではピンと来なかったのだけど、情報が出てくる都度、何とも言えぬ「!?」という感じがつきまとい、掘れば掘るほど驚かされた。

結論から言うと、 Wajeehaさん同様、Coke StudioのHouse Band側にSeason 8から折りに触れ起用されているシタール奏者。

なぁ~んだ、運のいい歩成りその2か~、って思いがちな所だけど、Coke Studio以前の経歴が不明なWajeehaさんとは異なり、彼の芸歴はとんでもない。
2人、足して2で割ったらいいんじゃないかっていうくらい。

代々続くシタール一家の8代目長男。それはまぁ、よい。
6歳からお遊戯会や発表会ではない、公式なステージで演奏もこなしていて、15歳頃には既に古典界(?)では「ものすごい若手」と認知されはじめ、Coke Studioに初めて起用されたSeason 8当時、彼は18歳。
Coke Studioでの芸歴がもう5年もあるのに、現在まだ23歳。

現在20歳のAbdullah Siddiquiくんも腰抜かしたけど、つくづく、パキスタン底知れない。
そして、そういう若手をしっかり捕まえ、支え、押し上げる土壌があるのはまじ素晴らしい。それでもこぼれ落ちてる若い才能は沢山いるのかもしれないけど。

という訳で、下はShehrozeくん20歳当時かな。出番は5:20あたりから。

Coke Studio Season 10| Laal Meri Pat| Quratulain Balouch ft. Akbar Ali & Arieb Azhar – YouTube

シタール以外に声楽もやっているようなので、今回のCoke Studioではシタール弾き語りをするんですかね~。

個人的な活動としては、古典には留まらず現代音楽にも積極的に活躍してる。

Shehroze Hussain | Teri Palkien | Bigfoot Music – YouTube

これは上述のAizazさん同様Big Footでのパフォーマンス。
自己のチャンネルも一応あるが、自前だと頑張ってるわりに若干残念な動画が多いので、彼みたいに才能はあるけど自力でそれをフルに出しづらい若手には、こういうプラットフォームは活きるだろうなぁ。

[追記: 2020/12/04]
出演者ビルボードが公開されたら Shehroze くんはそこにはいなかったので、予感はしてたのだが、今日からの始動……と同時に「おれ今年は歌わないんだ。シタールだけ。来年インシャッラ!」という投稿をしてました。実際、他アーティストの後ろで、数少ない House Band 要員的にシタール弾いてるし。なんで名前がリストアップされてたのか。もう1人の House Band 組の Wajeeha さんも、シレッと他アーティストのバックコーラスに居るし、ソロは無しか有りか。


という訳で、やはりちょいちょいっと貼って済ますには手強い粒ぞろいというのも解ったことだし、今年はいつになくCoke Studioも楽しめそう。

パの音楽シーンここから更に加速付きそうな予感がしてわくわくしちゃうわ。

今日、何度も触れたけど、古典の方から他ジャンルを喰いに行く潮流がここからどうなってくか、非常に興味深い。

音楽に限らずだが、古典芸能が時代に応じて世俗化していくことを憂うべきなのか、古典芸能を古の姿のまま真空パックすべきなのか、みたいな問いかけがたまに起きるけど、変容や変容の結果は歴史のこちら側の先端なので、それを否定してしまうのは実質、歴史の全否定と同意なんじゃないかな、というのが今の所のおいらのスタンス。

100年前ならいざ知らず、現代ならそれまでの過程は、記録として遺す技術は発達してる訳で、この時代に生きている生身の芸人たちにそのものの維持を強いる環境を作るよりも、周囲も当人も含めた皆で、都度の形の記録を失わないようにしておくことが大事なんじゃないかな。

なのでおいらは古典的な芸に携わる人達を天然記念物や滅菌室にいる病人みたいに扱うことはしないようにしてる。彼らもおれらと同時代に生きる個人だから。

Coke Studioに関しては、新旧、あとは、土地土地の芸能それぞれに対して一定の敬意を失わないようにしてるからこそ、双方のベクトルをバランス良く混ぜ込んだ良番組として続いているのかもしれない。

そしてその絶妙なバランスこそが、特に古典側に新たなよい刺激を与える役割を果たしてる、のかも。

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